紅茶の国の礎をもたらしたチャールズ2世王妃

井上 麻佐子

スコットランドからジェームズ1世から始まったスチュアート王朝。
次男チャールズ1世は、イギリス王の中で、唯一、民衆の前でギロチンで処刑された王様です。
王様が処刑されたイギリスは、その後、唯一、共和制をとります。
でも、クロムウェルによる共和制は、イギリスの国民性に合わなかったのでしょう。

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11年後には、彼も処刑され、王政が復古。 チャールズ2世が登場します。
今日は、そのチャールズ2世の元にポルトガルからやってきた、キャサリン オブ ブラガンザ王妃についてです。
当時のポルトガルは、イギリスにとっては、大切な友好国。
キャサリン王妃が結婚の際に持参金として持ち込んだのは、アフリカのタンジール、インドのボンベイ(現在のムンバイ)。
これが、その後始まる大英帝国の海外進出の拠点となり、また、紅茶の一大生産地であるインドを植民地とするための足がかりとなったのです。

また、貿易先進国であるポルトガルからやってきた王妃様がもたらしたのは、当時、大変、高級だった紅茶を、薬ではなく、お楽しみの喫茶として嗜む習慣。 紅茶はもとより、茶道具、そして、茶文化をイギリスに紹介したのは、このチャールズ2世の王妃様でした。

言葉も違う異国に政略結婚をさせられ、チャールズ2世との間に世継ぎを生むことはできず、また、敬虔なカトリック教徒であるため、英国国教会との確執に苦しんだキャサリン王妃。 チャールズ2世の死後、晩年、彼女は、弟が王様になったポルトガルに帰り、故郷でその一生を閉じます。
彼女自身の生涯は、幸せなものであったように思えませんが、キャサリン王妃がもたらしたものは、今に至るまでの、イギリス紅茶文化の礎を築いたと言ってよいでしょう。

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ロンドン中心部、テムズ川に面して、王妃が住んでいたサマセット・ハウスがあります。 現在、その一部にロンドン大学付属のコートールド・ギャラリーがあります。 印象派の絵画のコレクションで、点数は多くはありませんが、ゆったりと静かな時間を過ごすことができる、私の大好きな美術館のひとつです。
また、冬には、中庭がアイスリンクとなります。 大きな大きなクリスマスツリーの周りをアイススケートする人たちがいる光景はとても素敵!

是非、サマセットハウスのコートールド美術館に足を運んでみてください。
そして、異国情緒たっぷりなティーセットで紅茶を嗜む習慣、贅沢で優雅な紅茶文化をイギリスにもたらしたキャリン王妃に思いを馳せてみてください。

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アート オブ リビングでは、白金台にて、お仕事の時の何気ない会話にも役立つ教養を楽しく学ぶサロンを開催しています。 maco-style.jp

井上麻佐子のプロフィール

井上麻佐子井上 麻佐子 (いのうえ まさこ)
株式会社ザ・ブーケ 代表取締役

慶應義塾大学 経済学部 卒業後
モルガン銀行 リーマンブラザーズ証券会社 勤務
イギリス在住を経て、
株式会社ザ・ブーケ代表取締役に就任。現在に至る。

外資系金融業界を経て、イギリスにて、花装飾と生活芸術の世界と出会い、
1988年より、ヨーロッパ上流社会の生活の中での芸術、文化、習慣を学ぶ。
帰国後、花装飾の仕事とともに、2009年より、The Art of Living(生活芸術)の講座、
講演、および、執筆活動を行い、ヨーロッパの行事、習慣などを、様々な角度から、そのストーリーととも伝える活動に従事。
旅行に行ったり、映画を見たり、絵画を鑑賞したりする、現在に生きる私たちの楽しみが、より深くなる、楽しいヨーロッパの歴史、習慣をわかりやすく紹介。
美術館鑑賞 他、多数のイベントを企画。
2013年〜2015年 NHKラジオ第1 「ごごまり〜」レギュラー出演
〜暮らしに華を〜担当:毎回、ヨーロッパの伝統文化、習慣などを生放送で解説
2014年、2015年と、講座受講者とともに行く、「イングランド、スコットランドのツアー」を開催している。

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