
英語学習法
外国人と英語でスムーズにコミュニケーションがとれればどんなに良いかと思っている方は少なくないと思います。
日本人は、中学・高校合わせて6年間英語を勉強していますが、なかなか英語が話せないと不満な人が多いのではないでしょうか。
今回は、成人してから日本で英語を勉強する場合、どのような方法が効果的なのか考えてみましょう。
日本に住んでいると、英語に接する機会はかなり制限されます。
電車やデパートの放送で英語が流れてくることも最近は珍しくなくなりました。
またテレビなどでもバイリンガル放送も行われるようにはなりましたが、かなり制約のある中でしか、英語に触れることはありません。
皆さん自身の日常生活の中で、英語を聞いたり、話したり、読んだり、書いたりすることは本当に稀なのではないでしょうか。
1歳や2歳の子どもは、周りのことばを聞いて、その刺激を受けて徐々にことばを習得していきますが、英語に接することがほとんどない日本で生活する私たち大人が、子どもがことばを習得するのと同じように、英語を身につけていくことは不可能です。
しかし私たちには、子どもと違って、ことばを理解する力を養っています。
文の構造を理解したり、語を記憶したりする能力が身についているということです。就学前の子どもに、英語の基本5文型を説明しても理解することはできないでしょうが、大人であれば、英語の文型は難しいという人がいるかもしれませんが、何回か繰り返し説明を受ければ、その基本構造を理解し、実際の文に当てはめて記憶することは可能です。
英語に触れる機会があまりない日本で、大人が英語を学習していくには、この理解力を最大限に活用することが大切です。
つまり、まずは英語の文法をしっかりと身につけることです。
文法を理解し、文型、単語、熟語を覚えさせすれば、あとはそれを繰り返し何度も練習することです。文
法はよくわかっているし、英語を読んだり書いたりすることはできるけれども、話したり聞いたりするのが苦手という人は、単に練習不足というだけです。
英文法を理解し、練習さえ積めば、英語でスムーズにコミュニケーションをとれる日が来るのも夢ではありません。
温暖化現象
イギリスにも日本と同様に四季の移り変わりがみられますが、イギリスでは本格的な夏は短く、冬が長く続きます。4月の最高気温は15度ぐらい、最低気温は5度ぐらいです。
1年のうち7月が最も暑く、8月後半ともなると長袖が必要になることもあります。
このように年間を通して、イギリスでは日本ほど暑くなることはありません。
しかし最近のイギリスでは、温暖化現象がみられるようになってきました。私が初めて渡英しロンドンで生活を始めた1989年の夏には、30度を超える日は数える程度しかなく、日本から持っていった夏のワンピースやTシャツ類もほとんど着る機会がないまま秋になってしまいました。
2003年8月に二度目のイギリスでの生活を始めるためにロンドンに行きましたが、その年は8月といっても日本の真夏のようで、30度を越す非常に暑い日々が続きました。
引越しの荷物が次々と到着する中、暑さのため片付けがなかなか進みませんでした。
これまでイギリスの夏は短く、夏と言っても30度以下の気温が数日あるだけでしたから、イギリスの一般家庭には、扇風機は勿論のことエアコンは取り付けられていません。
1度目のロンドン生活では、家具付きの家二軒に住みましたが(最初の家は6年間、次の家は2年間)、どちらの家にも扇風機やエアコンはありませんでした。その代わり長い冬を快適に暮らせるよう、家の至る所に絨毯が敷き詰められていました。
玄関のドアを開けると、そこから絨毯です。基本的にイギリス人の家庭では、靴を履いたまま家の中でも生活をしますから、日本の家屋のように玄関に土間はなく、階段、廊下、すべての部屋に絨毯が敷かれていました。
台所の床だけは絨毯ではありませんでしたが、お風呂やトイレまでも絨毯です。風呂場でもバスタブの外は絨毯が敷かれていました。ですからお風呂やトイレの床を掃除するときにも掃除機を使っていました。
ところが二度目のロンドン生活を始めるにあたり、20件近くの家を見て回ったところ、最近改築された家では絨毯よりもフローリングが多くなっていることに気づきました。
イギリスでも夏の暑さが厳しくなってきたからでしょう。エアコンが設置された家はみませんでしたが、私たちが借りた家には扇風機がありました。
またイギリスで使われている車には、かつてエアコンはありませんでしたが、近頃ではエアコン付きの車も多くなってきたようです。
最近の日本の夏の猛暑によって温暖化を意識させられますが、日本だけではなくイギリスでも夏の暑さが厳しくなり、それに応じて生活様式も徐々に変わりつつあります。
ロンドンの渋滞税とゴミ問題
地球温暖化は、世界規模の大問題です。イギリスは、マーガレット・サッチャーが現役の政治家の頃から、環境問題に熱心に取り組んでいました。
今回は、温暖化への対策としてロンドン市が導入した渋滞税とゴミ問題を取り上げてみましょう。
2003年に私が2度目のロンドンでの生活を始めたときに、ロンドン市の渋滞税(Congestion Charge)という制度が始まりました。
渋滞税とは、ロンドン市の中心部に車で行く場合に1日に支払う税金のことです。
2003年当時は1日5ポンド(約1000円)でした。
税金を支払った1日の間は何度でもロンドンの中心部に入ることが可能です。ただし翌日になれば、またその日の1日分の税金を支払わなければなりません。
この税金の支払いを怠ると、罰金が科せられます。
渋滞税導入の背景には、税金の名前の通り、ロンドン中心部での車の渋滞問題がありました。
渋滞税導入以前には、中心部への通勤や買い物などに車が使われることが多かったのが、導入後は、車ではなくバスや地下鉄など公共の交通機関の利用が増えたようです。
ただし、空気を汚さない電気自動車は渋滞税の対象外で、電気自動車の場合は、渋滞税を支払わずにロンドンのどこにでも行くことができます。
ロンドン市は、税金まで導入し車の問題を大きく取り扱っていますが、ゴミ回収についてはまだまだ遅れています。
日本では、燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ゴミなど細かく分別し、ゴミの種類に応じた回収がされていますが、ロンドンではそのような分類はしません。
各家庭には大きな黒いゴミ箱が配置されています。
週に一度ゴミ回収車が回ってきますが、その際ゴミ箱を玄関前の道路に出しておけば、ゴミ回収の人たちが1軒1軒の家をまわってゴミを集めていってくれます。
そのゴミ箱には、燃えるゴミでも燃えないゴミでも分別することなくすべてまとめて捨ててよいのです。
ただ雑誌や新聞などの古紙だけには、別の回収用ゴミ箱が用意されています。つまり、古紙と一般のゴミは分別しますが、日本のように細かい分別はしません。
日本人の主婦が夫の仕事で渡英し生活を始めたとき、まず知りたかった英語が「燃えるゴミ」「燃えないゴミ」だったときいたことがありますが、それは日本と同じゴミ処理法を想定したためであり、ロンドンでは必要のないことなのです。
ロンドンは車の問題には熱心ですが、ゴミ問題については日本に比べ消極的です。しかし、いずれロンドンでも日本のようなゴミの分別が始まるのでしょうか。
クリスマスと正月
師走となり、今年も余日少なくなりました。12月から1月にかけて、クリスマス、正月と祝い事が続きます。
日本では宗教に関係なくクリスマスを祝い、この時期には町中でも家庭でもクリスマスの飾り付けをしていますが、私たち日本人には、やはり正月を年の始まりとして盛大に祝う習慣があります。日本人の正月に匹敵するのがイギリス人のクリスマスです。イギリス人にとっても1月1日は特別な日ですが、クリスマスの比ではありません。
日本では年末年始と仕事が休みになり、正月には普段は別々に暮らしている親族が集まってお祝いをしますが、イギリスでは、クリスマス・イブの24日から25日、26日まで休日となります。
26日はクリスマスではありませんが、イギリスでは ‘Boxing Day’という休日です。
日本の正月と同様に、イギリスのクリスマスには親族が集まります。
そしてクリスマスの食事をし、プレゼント交換をしたりします。
クリスマスには七面鳥を食べる習慣があるため、クリスマスが近くなると、スーパーでは七面鳥がたくさん陳列されています。またクリスマスの楽しみは何と言ってもプレゼントです。
日本のように子どもだけではなく、大人どうしもプレゼントの交換をします。
日本でもお歳暮として品物をやりとりすることがありますが、イギリスのクリスマスでは、1人1人個別のプレゼントを用意するのが一般的です。各人の好みや実用性を考え、12月になると皆プレゼントの買い物に忙しくなります。
日本では年賀状の交換という習慣がありますが、イギリスでは、クリスマス・カードをやりとりします。
12月になるとクリスマス・カードを送り、またカードを受け取った人は、それを1つのクリスマスのデコレーションとして、棚の上に並べたり、壁に貼り付けたりします。ですからイギリスの家庭では、大きなツリーの他に、クリスマス・カードも飾り付けられているのです。
一方、イギリスの正月は比較的静かです。日本では年末から、少なくとも3日までは休みになりますが、イギリスの正月休みは元旦の1日だけです。
大晦日といっても特別な過ごし方があるわけでもなく、通常通りの仕事をし、元旦だけが休みとなり、2日からはまた通常通りの仕事が始まるわけです。
大人の世界と子どもの世界
ロンドンで子育てをしていて驚かされたのは、イギリスでは大人の世界と子どもの世界がはっきりと区別されているということです。
勿論大人と子どもが共有できる場もありますが、大人の場に子どもが入ることは許されません。また子どものための場では、大人が子どもの安全を守るということが社会の約束となっています。
大人と子どもそれぞれの領域区分は、子どもが小さい頃から家庭の中で始まります。子どもが生まれて数ヶ月の頃から(家庭によっては出産後退院直後からかもしれません)、子どもと親の寝室は別々です。
子どもは子ども部屋のベビー・ベッドで、両親はメイン・ベッドルームで休みます。私は子どもと一緒の部屋に、夫は1人で別の部屋にという日本風の生活をしていましたが、イギリス人の友人にそれを話したところ、とてもびっくりされました。夫婦が別々に寝る、親と子どもが一緒に寝る、ということが信じられないようでした。
外食の場合にも、子どもが大人と同伴してよいレストランというのは限られています。ファースト・フード店では子どもが親と一緒に食事をする光景はよくみられますが、子どもがテーブル・マナーを身につけ、泣いたり店の中を走り回ったりすることがなくなるまで親が子どもを同伴できないレストランはたくさんあります。
言い換えれば、大人用のレストランでは、静かにゆっくりくつろいで食事ができることが保証されているということです。日本でも高級なレストラン、懐石料理の店などに赤ちゃんや幼児を連れて行くことはないでしょうが、イギリスほど明確に大人向け、子供向けのレストランが区別されていないため、食事中に隣の子どもが泣き始めたり騒ぎ始めたりして、せっかくの料理を楽しめないという経験が皆さんにもあるのではないでしょうか。
大人だけの領域が認められている反面、大人には子どもの領域、子どもの安全を守る義務があります。イギリスでは子どもが11歳になるまで常に大人が同伴していなければなりません。赤ちゃんが寝ているからといって、1人家に残して、その間に親が近くのスーパーに買い物にでかけるようなことは許されません。日本のデパートのおもちゃ売り場に子どもを残し、子どもがおもちゃを見て回っている間に買い物を済ます親がいるようですが、これもイギリスでは認められません。警察に捕まり、処罰されます。
イギリスはヨーロッパの中では比較的安全な国ですが、日本よりはるかに子どもを狙った犯罪が多く、親は子どもを常に護らなければなりません。その代わり、時には親という役割から開放され、大人としての時間を楽しむことも社会的に認められているのです。
プレイ・グループ
子育てをした方は、「公園デビュー」の体験があることでしょう。 子どもが外遊びできるぐらいに成長した頃、近くの公園に連れて行って、公園で遊ぶ子どもたちの仲間入りをすることです。
「公園デビュー」は、子どもが単に外遊びを始めるというだけではなく、社会との接触をもつ貴重な機会になります。
しかしイギリスには、このような「公園デビュー」はありません。子どもを連れて公園に行くことはありますが、 日本のように「ほとんど毎日定期的に同じ公園に行って同じ仲間と遊ぶ」といった慣習がないのです。
理由はいろいろ考えられます。 日本に比べてイギリスは年中寒く、特に秋から冬にかけて日照時間が短いという気候の問題が要因の1つにあげられます。
またイギリス人は、子どもをもつと庭付きの家に引っ越すことが多く、わざわざ公園にでかけなくても自宅で外遊びができるということ もあるでしょう。
治安の問題もあります。知人の日本人が日本の「公園デビュー」と同じ感覚で公園に出かけたところ、 ドラッグをやっている男と遭遇したということです。
園での外遊びの代わりに、イギリスでは「プレイ・グループ」というものがあります。
これは、教会などの室内で、幼稚園に行く年齢に達していない子どもが親と集まって、何かしらの遊びを一緒にするグループのことです。
プレイ・グループでは、1回につき3ポンドから5ポンド(約600円から1000円)の費用がかかります。
私と息子は「タンブル・トッツ」と「ミュージカル・ミニ」という2つのプレイ・グループにそれぞれ週に一度通っていました。
「タンブル・トッツ」は、主に体を動かすことを目的としたプレイ・グループで、教会の中の広間を利用して、 平均台やマットなど子どもの運動のための機具が 備え付けられ、音楽に合わせて、そこを歩いたり転がったりと1時間程度運動しました。 「ミュージカル・ミニ」は、その名の通り音楽が目的で、NHKの番組「お母 さんといっしょ」に登場する「お姉さん」のような歌の先生に合わせて、歌ったり踊ったり楽器に触れたりしました。
当時、息子だけではなく、子育てで家に居ることが多かった私には、2つのプレイ・グループは社会と接触する場であり、 毎週とても楽しみにしていました。特に「ミュージカル・ミニ」では、英語の勉強はしていても、 全く知らなかった英語の童謡に触れることができ、とても興味深い経験になりました。
出産
私は1991年にロンドンで男児を出産し、息子が5歳までロンドンに住んでいました。今回から私自身の経験に基づいてイギリスでの出産、子育て、教育を紹介したいと思います。今から十数年前のことになりますが、まずは出産についてご紹介しましょう。
出産前の検診はロンドンの日本クラブ診療所に通っていました。
ロンドンには、日本人の患者を対象として日本人医師のいる病院が数件ありますが、日本クラブ診療所はその1つです。
ロンドンの北にある北診療所と南にある南診療所と2つありますが、当時はゴールダーズ・グリーンという所にある日本クラブ北診療所(今はもっとロンドンの中心地に移転しています)で定期的に検診を受けていました。
出産は、私立の病院でも公立の病院でも可能ですが、私は私立のガーデン・ホスピタルで出産しました。私立と公立の大きな違いは、なんといっても出産費用です。
私立病院は有料で当時もかなりの値段でしたが、公立病院は無料です。イギリスは福祉が行き届いていると言われますが、医療に関しては、National Health Service(略してNHS)というサービスがあり、このNHSを使えば、患者の年齢や収入に関わらず、治療費は全くかかりません。公立病院はNHSですので全くお金がかからないのです。
費用に比例して、当然のことながら病院で受けられるサービスにも私立と公立では違いがみられます。私立では入院料を払えば患者が希望するだけ長く入院できますが、公立ではたいてい出産の翌日か翌々日には退院しなければなりません。
また、私立病院ではシャワールームやテレビ付きの広い個室で、食事も毎回メニューが渡され、好きな物を注文し部屋まで運んでもらえますが、公立では数名で1室をシェアーし、食事は各自が食堂でとるといった形式です。
1991年当時、私立の病院では無痛分娩が実施されることもありましたが、私が出産した病院では、無痛分娩は奨励されておらず、その代わり水中出産を経験しました。
分娩室はとても広く、部屋の隅に丸く大きなプールがおかれていました。陣痛を我慢する間水中に居ると、その痛みが軽減されるのだと看護士が説明してくれました。最終的に私はベッドに横になって出産しましたが、希望すればプールの中でも出産できるそうです。
イギリスでは、私立でも公立の病院でも、出産は夫婦の共同作業と見なされ、夫も出産に立ち会うのが一般的です。私の場合も、夫が10時間近くプールの横で付き添ってくれ、子どものへその緒も夫がカットしました。
人の呼び方 5
みなさんは、配偶者である夫の母親を人に紹介する際、母親を何と呼びますか。「ハハです。」「夫のハハです。」などでしょうか。「シュウトメ」という言葉は使わないでしょうか。
同じ状況で、英語ではどうなるのでしょう。前回に引き続き、今回も家族の呼び方、特に、配偶者の家族のような血縁関係にはない家族に対する呼び方を取り上げます。
夫の母親を指すことばとして日本語には「シュウトメ」がありますが、夫の母親を前にして、「シュウトメ」ということばを使うのには抵抗があるのではないでしょうか。
実の母親も夫の母親もあまり区別せず、どちらも「ハハ」と呼ぶような人もいるかもしれませんね。
一方、英語では実の母親と配偶者の母親とははっきり区別して表現します。
実の母親は ‘mother’、配偶者の母親は ‘mother-in-law’ です。実の母親とおなじぐらい夫の母親とも仲が良くても、やはり夫の母親は ‘mother-in-law’ です。
‘in-laws’は通常複数形で用いられ、婚姻によってできた親族、つまり姻族を意味します。
‘in-law’にハイフン ‘-’を付け加えた ‘-in-law’は ‘mother’ だけではなく他の親族語にも後続し、さまざまな姻族を表すことができます。
‘father-in-law’は夫の父、 ‘sister-in-law’は夫の妹というわけです。このように、英語では血族と姻族をはっきりと区別します。
イギリスの離婚率、再婚率は日本よりも高く、再婚することによってその家族も増えることになります。
再婚同士の場合には、お互いに子どもを連れて結婚する可能性もあり、そのような場合には、子供同士は血縁ではないものの義理の兄弟姉妹になります。このような子どもを ‘stepsister(義理の姉/妹)’ ‘stepbrother(義理の兄/弟)’と呼びます。
‘in-law’とは別に、‘step-’は親または配偶者の再婚によって生じた家族関係を表します。
日本語で「姑」「継母」というと、単に夫の母親、父親の再婚相手というだけではなく、「冷たく意地悪な人物」という意味が含まれているとも考えられますが、 ‘mother-in-law’ ‘stepmother’にはそのようなニュアンスはありません。
ただ単に家族関係をはっきりと示しているだけです。日本語とは違い、否定的な意味合いが感じられないこともあって、英語では ‘-in-law’ ‘step-’が臆することなく使われるのかもしれません。
人の呼び方 4
これまで職場や学校での人の呼び方を取り上げましたが、今回は家族の呼び方、特に兄弟姉妹の呼び方を日本語と英語で比較してみましょう。日本語で妹を人に紹介する場合、妹を指し示し「妹です。」と言い、英語では、“This is my sister.”となります。
日本語では「兄弟」「姉妹」という表記が示すように、性差と長幼で相手の区別をします。
つまり男性か女性か、年齢が自分より上か下かによって、相手を表すことばが違ってくるというわけです。
相手が女性であれば「姉」か「妹」のいずれかであり、自分より年上ならば「姉」、女性でも自分より年下ならば「妹」ということになりますね。
ところが、英語では性差の区別はしますが、長幼の区別は日本語ほどはっきりと示しません。相手が男性であれば ‘brother’、女性であれば ‘sister’と区別するだけです。
‘elder brother’ ‘younger sister’という表現形式もないわけではありませんが、兄なのか妹なのかを明確にしなければならない場合にのみ使われ、あまり一般的ではありません。英語圏では、兄弟姉妹関係の血族であるということが重要で、年齢の上下は問題ではないということでしょう。
これは、相手に呼びかける場合にもはっきりと現れます。日本語では、兄に対しては「お兄ちゃん」「お兄さん」のように親族語を使って呼びかけるのが一般的です。
また弟には「弟ちゃん」「弟さん」のような言い方はせず、「ひろし」「ひろしくん」「ひろしちゃん」のように名前で呼びかけます。
一方、英語では兄でも弟でも、姉でも妹でも、名前で呼びかけます。兄であっても、名前が ‘John’であれば ‘John!’と、姉であっても ‘Susie’という名前で呼ぶのです。‘Brother’ ‘Sister’のように親族語を使って話しかけるということはありません。
このような日本語と英語の違いには、家組織の考え方が関係しているかもしれません。
日本では、長男がその家を引き継いでいくという家長制度がありました。
そのため兄と弟では、同じ男性でも立場が全く違っています。
その違いをことばで表すため長幼の概念を取り入れた表現が日本語には取り入れられているのかもしれません。
英語圏の社会では、日本ほど長男が一族すべての責任を負うといった考えは一般的ではありません。このような社会的通念の違いがことばにも影響を及ぼしているとも考えられます。
人の呼び方 3
今回は、学校内での、特に学生から先生に対する呼び方について取り上げてみましょう。
日本語では、「田中先生」「山田先生」のように、先生を呼ぶ場合には、「姓+先生」という形式をとりますね。
そのため、これを逐語訳して「スミス先生」を “Smith Teacher” と呼ぶことができるか、というとそれはあり得ません。ご存知のように、「先生」は英語で “teacher”ですが、呼称の場合に “last name + teacher” という形式が使われることはないのです。
一般的には、日本語では「先生」という意味合いでも、 “Mr.” “Mrs.” “Miss” といった敬称が使われます。
従って、男性の「スミス先生」では “Mr. Smith”、既婚女性の「スミス先生」では“Mrs. Smith”、未婚女性の「スミス先生」では “Miss Smith”となるわけです。ただし、大学では「先生」の呼び方にもバリエーションがあります。
日本語では、先生が教授であっても助教授であっても講師であっても「田中先生」と呼びますが、英語では、先生の地位を明確に呼称に反映させます。大学教授は “Professor Smith”、講師であっても博士の学位をもっている先生に対しては “Dr. Smith”と呼びます。また教授でもなく博士の学位のない大学の男の先生は “Mr. Smith” です。
日本には大勢の大学教授がいますが、イギリスの教授は日本よりはるかに少数です。つまり“Professor”の称号をもつ人は稀であるということになります。そのため博士号をもつ大学教授に対しては、教授の称号を優先して “Dr. ~”ではなく“Professor?”と呼ぶようです。
また日本語では、名前を使わずただ単に「先生」と呼ぶこともありますね。英語でも同じ様な呼称があります。学校によってもさまざまなようですが、息子が通っていたインターナショナル・スクールでは、男の先生は “Sir”、女の先生は “Miss”と呼んでいました。
女の先生に対しては、既婚であっても “Mrs.” ではなく“Miss”と呼ぶのです。はっきりとした理由はわかりませんが、かつて女性教師はほとんどが未婚だったためではないか、という話をきいたことがあります。
また、イギリス王室の二人の王子がかつて通っていたイートンというパブリック・スクールで教師をしていた友人によると、イートン校では、女の先生は “Madam”の略の “Ma’am”と呼ぶそうです。
このように、学校によっていろいろな呼称がありますが、「?先生」の意味で “?teacher”と呼ぶことはできない、ということを覚えておくとよいでしょう。英語の複雑な文法知識は身につけていても、このような日常生活に密着した英語の誤りが意外と多いものです。
人の呼び方 2
前回「人の呼び方?」では、 英語圏においては、‘Mr./ Mrs./Ms./Miss + last name(姓)’よりも ‘first name’だけの「名前呼び捨て」で相手を呼ぶことが多いということに触れました。
これは、知人や友人を対象とするだけではなく、ビジネスの場面でも同様です。
英語の映画やドラマで、上司に対して ‘Mr. Brown’ というような ‘Mr.’の敬称をつけた呼び方ではなく、‘John’と名前で呼んでいるような場面を見たことはありませんか。同僚は勿論、上司に対しても、またクライアントに対しても「名前」を呼び捨てにすることがあります。
ただし、誰でも構わず「名前呼び捨て」をして良いわけではありません。それぞれの仕事場で慣習があることでしょうから、それを見極めることが大切です。同僚に対しては「名前呼び捨て」が一般的ですが、上司に対しては、同じセクションの上司であれば「名前呼び捨て」も可能でしょうが、会社の上層部、重役クラスの上司に対して同様に名前だけで呼んでいいかどうかは疑問です。たいていは、初対面のときに
上司のほうから、
‘Please call me John.’ (「僕をジョンと呼んでください。」)
というように呼び方を指定されることがあります。そうすれば、これに従えばよいわけです。
私が通っていたロンドン大学の大学院でも同じような経験をしました。
私の指導教官は言語学の博士号をもっている先生だったので、初対面のとき敬意を表し、
“Hello, Dr. Allford.”
と、「博士」を表す敬称の “Dr.” に先生の姓を加えて呼びかけたところ、先生はにっこり笑って、
“Please call me Douglas. I’ll call you Yuri. OK?”
とお答えになりました。大学院の先生に対して「名前」を呼び捨てにするというのは実際とても抵抗がありましたが、それ以降互いに名前で呼び合うようになりました。
日本でも、地位に関わらず互いを「?さん」で呼び合う会社もあるものの、同僚ならまだしも、上司の名前を呼び捨てにすることには抵抗を感じる人が多いのではないかと思いますが、「郷に入れば郷に従え」です。
ただ、呼び方を決めるのは、立場の下の者ではなく、上の者であるということを理解しておくことは大切です。
人の呼び方 1
このページのタイトルは「イギリスの英語と社会」ですが、これまでイギリスの「社会階級」を5回にわたって取り上げてきました。
今回からは「英語」に焦点をおきたいと思います。
まず英語での人の呼び方について考えてみましょう。「人の呼び方なんて簡単。苗字の前に、男性だったら“Mr.”、女性だったら“Miss, Ms, Mrs.”をつければいい。
だって“Mr.”や“Mrs.”は、日本語の「?さん」と同じだから。」と思う方もいるでしょう。
確かに、“Mr.”や“Mrs.”は「?さん」と似通った使い方もありますが、必ずしも全く同じものと考えるわけにはいきません。
“Mr.”や“Mrs.”と「?さん」は共に、相手への敬称として苗字につけられます。
私の場合は、「小森さん」あるいは“Mrs. Komori”と呼ばれるわけです。
さらに英語の場合には、自分の称号として“Mr.”や“Mrs.”を使うことも可能です。つまり、ホテルなどのチェックインの際、
“May I have your name?” 「お名前は?」と訊かれ、
“My name is Mrs. Komori.” と答えることも可能なのです。
“Mrs. Komori”と自分自身を呼ぶことで、相手もそれにならって、
“OK, Mrs. Komori. May I have your address?”と会話が進んでいきます。
また「?さん」と“Mr.”や“Mrs.”は、敬称として使う相手に違いがあります。
「?さん」は比較的自由に誰に対してでも使うことができます。
初対面の相手は勿論、友人、知人、同僚など相手を限定する必要はありません。皆さんも、子どもの頃からの友達は別にして、大人になってから知り合った人、友人になった人には「姓+さん」で呼んでいることでしょう。一方“Mr.”や“Mrs.”は「?さん」ほど幅広く使われません。英語圏では知人、友人に対してはlast name(姓)よりもfirst name(名前)で呼ぶ場合がほとんどです。
ホーム・パーティーなどでは、初対面でも、姓よりも名前を強調し、
“My name is Yuri.”
と、姓を省いて名前で自己紹介し、初めて会ったときから互いに名前で呼び合うのが慣習となっています。
日本語で私を「ゆり」と呼びすてにする男性は、父と夫ぐらいのものですが、英語で“Yuri”と呼ぶ男性は、友人のイギリス人の夫、イギリス人の英語の先生、ロンドン大学院時代の恩師、夫のイギリス人の上司など数多くいます。
日本語で名前を呼び捨てにするのは、男女間に限らずかなり親密な関係にある場合ですが、英語圏ではそうとも限りません。
コックニー(Cockney)
これまでイギリス社会について、どのように階級が区分けされ、それが日常生活にどのように関わってくるかみてきました。今回は、社会階級と英語との関係について取り上げてみましょう。イギリスの階級社会と英語というと、まず思い浮かぶのがコックニー(Cockney)です。コックニーとは、ロンドン下町の言葉で、労働者階級の代表的な英語と言えるでしょう。
コックニーには、大きく2つの特徴があります。まず一つ目は発音です。
(1)hの音が発音されない ’appy(happy:幸せな)
(2)thがfやvの音になる fink(think:考える) wiv (with:?と一緒に)
(3)owがerになる winder (window:窓)
(4)?ingのgの音が発音されない singin’(singing:歌うこと)
これらが主な例としてあげられます。例示したコックニーの単語を( )内の標準英語の単語と1つ1つ比較すると、「ああ なるほど」と納得できますが、これらが話し言葉の中で使われるとなかなか理解するのが大変です。
さらに難解なコックニーの特徴は、韻を踏む言い方(ライミング スラングrhyming slang)です。特定の語を、韻を踏む別の連語で言い表すということです。いくつか例をあげてみましょう。コックニーでは、「階段」を意味する ‘stairs’を ‘apples and pears(りんごと梨)’といいます。これはラインの箇所が韻を踏んでいるからです。また ‘teeth(歯)’を同じように韻を踏んで ‘Hampstead Heath(ハムステッド・ヒースという地名)’と表現します。このように、意味の上では無関係ですが、音の面からさまざまな単語に匹敵する連語が存在します。
このようなライミング・スラングは19世紀前半に生まれたと考えられ、このスラングが発生した理由についてはいくつかの説が唱えられています。ロンドンの乞食の言葉、泥棒の隠語、レンガ職人の言葉から生まれたとする説です。どれが真実かはわかりませんが、要は仲間同士の言葉で、他人に話の内容を知られたくないための特別な隠語として、このように複雑な連語が考えられたということです。
テロについて
今回は、「イギリスの労働者階級の英語」について触れる予定でしたが、8月にイギリスのヒースロー空港で未遂に終わった航空機爆破テロ事件に関連して、ロンドンを中心としたテロとテロ未遂事件を取り上げたいと思います。
先月8月には、イギリスに長く住んでいる友達数名が一時帰国しており、昨年7月に起きた爆破事件とその後のロンドンの様子について話をきくことができました。昨年7月のテロでは、ロンドンの3箇所で地下鉄やバスが爆破されたことは皆さんのご記憶にあることでしょう。その3箇所のうちの1つ、ラッセル・スクエア(Russell Square)駅近くで、爆破があったという報道を聞いたときには本当に驚きました。ラッセル・スクエア駅は、ロンドン大学の最寄り駅で、私もロンドン在住時にはよく使っていたからです。事件直後ロンドン大学でお世話になった先生にメールを送ったところ、「ちょうど爆破時には大学内に居て、爆破音を聞いたが、工事か何かの音だろうとあまり気にしなかった」という返事をいただきました。午前9時半ごろの爆破だったと記憶していますが、もしもう少し早い時間だったら、通勤時に巻き込まれた人が多かったかもしれません。8月に一時帰国していたロンドン大学の先生によると、テロ当日は電車やバスなどの交通機関がすべて止まり、歩いて帰宅したり、帰宅できない人も多かったそうです。
日本では報道されていないと思いますが、今回のようなテロ未遂に近い事件は、私がロンドンに住んでいた2004年にも起こりました。
スペインで地下鉄爆破事件が起こり、イギリスでもテロの警戒度が高まっていた頃、早朝6時にロンドンの7箇所で一斉に家宅捜査が行われたということがニュースになりました。
テロ用の爆弾を作り保管していたという容疑で数人が逮捕されました。その頃私はロンドン北西部の治安の良い住宅地に住んでいましたが、隣町でその家宅捜査が行われたのです。
本当にびっくりしましたが、実はこのような事件は日本で報道されていないだけで、イギリス国内ではテロを警戒してさまざまな動きがあるのだと思います。
一時帰国していた友人の一人が、「日本は本当に平和で良い。」と言っていました。イギリスで暮らしていると、常にテロには用心しなければなりません。私たちの日常生活が脅かされないよう、日本の平和がいつまでも続けばよいと願うばかりです。
社会階級(Social Class) 【4】
「社会階級【3】」では、イギリス社会の中流階級と労働者階級の違いを、職業という観点から捉えましたが、職業だけではなく、生活様式一般にもこれら2つの社会階級差がみられます。今回は住居を例にあげてみましょう。
まず、中流階級と労働者階級では、住む地域が違います。 ‘East End’ という英語がありますが、これは文字通りにはロンドンの「東の端」を表し、労働者階級の人々が多く暮らす地域を指します。従って‘East End’に‘-er’が付く‘East Ender’とは、ロンドンの東部地区の住人、つまり労働者階級の人々を意味します。一方、私がかつて住んでいたロンドン北西部は、富裕層が多く住む住宅地ですが、その中でもHampsteadは文化人が多い高級住宅地域です。かつては夏目漱石も留学中の一時期をここで過ごしたことがあります。East Endとは対照的に、Hampsteadなどは上層中流の人々が暮らす地域の1つです。
また、転居という点からも2つの階層は異なっています。中流階級は相対的に引越しが多いのに対し、労働者階級はあまり転居をしません。中流階級は、結婚すると新婚のカップルが住むのに適した広さの家やフラット(日本語のマンションと同義)を購入します。その後子どもが産まれ家族が増えると、庭のある家に引っ越します。子どもが大きくなり部屋数が必要になるとまた引っ越すこともあります。私の友人の中で、8年間の間に5回も転居した中流階級の夫婦がいます。中流階級では家族数の変動、家族の状況に応じて、家を転売しながら引越しを続けるのです。これに対して、労働者階級は転居することはあまりないようです。
このように、労働者階級と中流階級とでは、慣習的にそれぞれ住む地域が決まっており、また転居の回数にもその違いが認められます。転居数の違いから、中流階級は住んでいる地域の人々と深く関わることが少なく、逆に労働者階級は近隣の人々との交流が深く、緊密な人間関係を築いているという差も生じることがあります。
社会階級(Social Class) 【5】
「社会階級」シリーズも【5】となりました。前回は、イギリス社会の中流階級と労働者階級の違いを、住居という観点から取り上げましたが、今回は、それぞれの階級の日常生活に踏み込んでみたいと思います。
新聞は、私たちの生活の大切な情報源ですが、購読する新聞にも階級差がみられます。イギリスの新聞は、quality paper(高級紙)とpopular press(大衆紙)に大別されます。Quality paperとしてはThe Times, The Guardian, The Independentがあげられ、popular pressの代表はThe Sunです。二種類の新聞のうち、中流階級はquality paperを、労働者階級の人たちはpopular pressを好む傾向がみられます。
さまざまな英語の勉強のためにと、私も1度The Sunを読んだことがあります。もう10年以上前のことで詳細は忘れましたが、とても英語が難しく内容が理解しにくかったことを覚えています。「英語が難しい」というのは、複雑な構文や表現を用いた英語というのではなく、「馴染みのない英語」だったためです。日本の学校教育の英語は、The Timesのようなquality paperで用いられるスタンダードな英語ですから、私のように典型的な日本の英語教育を受けてきた者にとっては、労働者階級の英語が色濃く表れているThe Sunは読みづらくなるのです。
2つの階級差は、新聞だけではなく、食べ物や食料を購入するスーパーマーケットにも及びます。以前、中流階級の人々がかかる病気と労働者階級の人々の病気は違っているという調査結果が新聞で報じられていました。病気の違いは、食べ物が異なるということが原因だったと記憶しています。つまり、階級によって食べ物の種類も違ってくるということなのです。
また、その食べ物を購入するスーパーも違っています。ロンドンには、大きなスーパーのチェーン店が数種類ありますが、その筆頭にMarks&Spencerがあります。ここで買い物をするイギリス人というのは、典型的な中流階級といえるでしょう。店内もきれいに整頓され、店員の教育も行き届き、商品も高品質ですが、値段もなかなかです。
このように、日常生活の中で中流階級と労働者階級との違いが認められます。次回は、労働者階級の英語に着目したいと思います。
社会階級(Social Class) 【3】
前回の「社会階級【2】」では、イギリス社会の主な3つの階級である上流(upper class)、中流(middle class)、労働者階級(working class)の中で、「上流階級」に言及しましたが、今回は「中流階級」と「労働者階級」を取り上げてみましょう。
王室や貴族に限定される「上流階級」とは違って、「中流階級」と「労働者階級」は幅広い一般庶民から構成されています。これら2つの階級が何によって分けられるのかその基準を明示するのは難しいということは、「社会階級【1】」ですでに述べたとおりですが、一つの目安として職業があげられるでしょう。極論ですが、「中流階級」と「労働者階級」には、ホワイト・カラーとブルーカラー違いがあると単純化できるかもしれません。
「中流階級」の中でも、特に上層中流(upper-middle class)というのは、官僚、医者、弁護士、会社の上層部など社会の中心的勢力で、高等教育を受け専門的な仕事についている人たちです。私たちが日本社会の中で考える「上流」と同じような階級と捉えてよいでしょう。一方「労働者階級」というと、‘plumber’と呼ばれる人たちに代表されるような印象を私は個人的にもっています。‘plumber’は「配管工」と訳されていますが、台所の流し、洗面台、風呂場などの給排水工事や電気関係の修理など家の中の故障やトラブルを何でも修繕してくれる職人を指します。
このように捉えると、支配者、指導者として「中流階級」が存在し、「労働者階級」はその指示によって労働する者というような上下関係が2つの階級間にあると思うかもしれませんが、必ずしもイギリス社会ではそうは言い切れません。勿論、上層中流の人たちは、自分たちが社会の中枢を担っているという自負があるかもしれませんが、労働者層も同様に、自分たちの仕事に誇りをもって現状に満足している人たちが多いようです。これが、イギリスの社会階級がアメリカのそれと比べて流動性が低い要因の1つではないかと思われます。
社会階級(Social Class) 【1】
「あなたは日本社会の中の上流階級、中流階級、下流階級のどれに属していますか?」と尋ねられたら、何と答えるでしょう。前回はイギリス英語の「社会方言」に触れましたが、今回は「社会方言」と深い関係のある「社会階級」という考え方を紹介します。
「社会階級」というのは、社会の中にあるいくつかのグループの上下関係による序列を指すことばです。社会学者の間でも、「社会階級」の定義をめぐっては議論があるようですが、言語と社会との関係を研究する社会言語学の分野でも、階級の数や構造、その境界も恣意的です。言語データを話し手の「社会階級」という属性から分析したLabovというアメリカの言語学者がいます。Labovは、ニューヨーク市の社会階級を、<教育・職業・収入>の3つの尺度から<下層・労働者層・中流下層・中流上層>の4つに分けています。一方、イギリスの言語学者Trudgillは、ノーリッジという町における研究で、<職業・収入・教育・住居形態・地域・父親の職業>の6つの尺度によって<労働者下層・労働者中層・労働者上層・中流下層・中流中層>の5つの社会階級を示しています。
アメリカとイギリスという同じ英語圏の社会であっても、二人の言語学者の例にみられるように、階級の数もそれを区分する指標も違っています。2つの例を比較すると、イギリスのほうが階級の尺度の数が多く、その構造も複雑です。階級を区分する尺度でも、イギリスでは<父親の職業>があげられていることから、アメリカよりは社会的階級には世襲の要素が強いのではないかと考えられます。つまり、アメリカでは親が労働者階級であっても、子どもが中流階級になることもありますが、イギリスでは階級間の流動性は低く、親が労働者階級の場合、その子どもも同じように労働者階級に属することが多いということです。
「社会階級」というのは、一見すると単純なもののように思えますが、実は幅の広いカテゴリーで捉えどころがない概念ともいえます。さて、日本社会の場合はどうでしょうか。最近ではかつての「一億総中流」意識が薄れ、さまざまな社会階級が生まれてきているのではないでしょうか。
『マイ・フェア・レディ』
みなさんは、「方言」というと「東北弁」や「関西弁」というようなその土地その土地によって違う言葉の使い方、つまり「地域方言」を思い浮かべるかもしれません。イギリスにも勿論日本と同じように地域によって異なる言葉がありますが、話し手の社会的階層にもとづいた「社会方言」もあります。
オードリ・ヘップバーン主演のミュージカル映画『マイ・フェア・レディ』には、ロンドンの社会方言が顕著に現れています。『マイ・フェア・レディ』は、バーナード・ショウの『ピグマリオン』という作品をミュージカルにしたもので、ロンドンのコベント・ガーデンでヘップバーン扮する花売り娘イライザと言語学者ヘンリー・ヒギンズ教授が出会い、教授が下町娘に淑女としての発音と行儀作法を身につけさせようと奮闘する内容です。
イライザは、「コックニー」と呼ばれるロンドン下町の庶民の言葉を話し、ヒギンズ教授は、イライザに「容認発音 (Received Pronunciation) 」(俗に RP と呼ばれる)を手本とする発音を教えるのです。「コックニー」は、ロンドンの労働者階級が使う方言で、 RP は、高度な社会的・教育的バックグラウンドの者や、 BBC 放送や専門職に従事する者が用いるアクセントとして考えられています。
このように話し手の社会階層を反映するコックニーと RP を一つの連続体とみなすと、「エスチュアリ英語」がその中間に位置するものとして最近注目され始めています。エスチュアリ英語は、若者の間で都会的な響きをもっていることや、コックニーや RP の中道を求める動きによって 90 年代から徐々に広がりつつあります。
「イギリス人」の謎 その1
80年代後半から90年代にかけてロンドンに住んでいた頃、ロンドン大学で日本語を教えていたことがあります。日本語の初級のクラスで、イギリス生まれ、イギリス育ちだと思っていた学生に、肯定の答えが返ってくることを期待して、「イギリス人ですか?」という質問をしたところ、「いいえ」と否定されました。どうして?と思っていると「わたしはスコットランド人です。」というのです。それまでスコットランドもイギリスの一部だと思っていた私は、学生の答えに戸惑ってしまいました。
私たちが一般に「イギリス」と称する国の正式名称は「グレート・ブリトンおよび北アイルランド連合王国United Kingdom of Great Britain & Northern Ireland」です。アメリカ合衆国の略 “USA”と対照して “UK”を私たちが呼ぶ「イギリス」の略とご存知の方も多いと思います。つまり、俗に言う「イギリス」は、スコットランド、ウェールズ、北アイルランド、イングランドの4つの地方から成る連合王国(United Kingdom)なのです。中学校で “England”を「イギリス」と習い、あの島全体を「イギリス」だと思っている方も多いのではないかと思いますが、Englandは連合王国の一部なのです。
スコットランドはブリトン島の北部、ウェールズは島の南西部、イングランドはスコットランドとウェールズを除いた島の中南部、北アイルランドは他の3つの地方とはアイリッシュ海を隔てたアイルランドの北部です。これら4つを合わせて1つの国なのですが、それぞれ地方の独立性も感じられます。地理的に違うだけではなく、ことばの面でも違いが見られます。次回は、4つの地方の言語をみていきましょう。
世界の言語ベストテン
やはり、日本人にとって一番馴染みのある外国語というと、英語でしょうか。中学に入学すると、外国語教育として英語の学習が始まります。
今では、小学校でも英語に触れる授業があります。テレビをつけても、英会話学校の CM が目につき、新聞、雑誌でも英語教材の宣伝をよくみかけます。
世界中には 3 千から 7 千もの言語があるといわれていますが、日本で人気のある英語は、世界でどれだけ多くの人たちが使っているのでしょうか。
公用語、母語と区別して世界の言語ベストテンを紹介しましょう。
公用語ベストテン
| 1位 | 英語 | 約 14 億人(イギリス・北米・オーストラリアなど) |
| 2位 | 中国語 |
約 10 億人(中華人民共和国・台湾など) |
| 3位 | ヒンディー語 |
約 7 億人(インド) |
| 4位 | スペイン語 |
約 2 億 8 千万人(スペイン・中南米) |
| 5位 | ロシア語 |
約 2 億 7 千万人(ロシア・旧ソビエト連邦) |
| 6位 | フランス語 |
約 2 億 2 千万人(フランス・ベルギー・スイスなど) |
| 7位 | アラビア語 |
約 1 億 7 千万人(中東・アフリカ大陸北部など) |
| 8位 | ポルトガル語 |
約 1 億 6 千万人(ポルトガル・ブラジルなど) |
| 9位 | マライ語 |
約 1 億 6 千万人(インドネシア) |
| 10位 | ベンガル語 |
約 1 億 5 千万人(バングラデシュ・インド) |
| 11位 | 日本語 | 約 1 億 2 千万人(日本) |
母語ベストテン
| 1位 | 中国語 | 約 10 億人 |
| 2位 | 英語 |
約 3 億 5 千万人 |
| 3位 | スペイン語 |
約 2 億 5 千万人 |
| 4位 | ヒンディー語 |
約 2 億人 |
| 5位 | アラビア語 |
約 1 億 5 千万人 |
| 6位 | ベンガル語 |
約 1 億 5 千万人 |
| 7位 | ロシア語 |
約 1 億 5 千万人 |
| 8位 | ポルトガル語 |
約 1 億 3 千 5 百万人 |
| 9位 | 日本語 |
約 1 億 2 千万人 |
| 10位 | ドイツ語 |
約 1 億人 |
公用語、母語といっても、区分は難しいかもしれません。
公用語というのは、国の言語として政府が使うと決めた言語のことです。
日本の公用語は日本語ですね。そして母語とは、幼児の頃から聞いて自然に身につけた言語です。
たいていの日本人にとって、日本語が母語になると思います。
日本では公用語も母語も日本語のため、区別しにくいかもしれませんが、公用語と母語が違うという国は世界にたくさんあるのです。
上の表の通り、公用語 (1 1位 ) としても母語 (9 位 ) としても約 1 億 2 千万の人々が日本語を使っています。一方、英語は公用語として堂々の 1 位で、約 14 億もの人々が使っています。
英語は、イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ共和国、インド、アフリカ諸国などで国の言語として使われているのです。
でも、母語としては約 3 億 5 千万人の人々が使うだけで、中国語に大差をつけられ 2 位です。公用語として英語を使っている国の人々でも、必ずしも英語が母語ではないということですね。 イギリスで話される言語というと、すぐに英語を思い浮かべることと思います。
確かにイギリスの公用語は英語ですが、「イギリス人」が母語としても英語を身につけているかというと疑問です。
一般に、日本人がイメージするイギリス、イギリス人、イギリス英語とその実態は意外とギャップがあります。
これから、この欄では、私がイギリスで生活した経験をもとに、イギリスの英語・社会について紹介していきたいと思います。

