エリザベス1世

井上 麻佐子

歴史映画などでもお馴染みの「エリザベス1世」は、チューダー朝時代、英国国教会を樹立したヘンリ−8世の娘です。
と言っても、第一王位継承権があったわけではなく、聡明だけれど早逝した長男エドワード6世、プロテスタント教徒を火炙りにし、国の宗教をカトリックに変えようとしたメアリ−1世。 王の座は、この姉弟二人の王を経て、思いがけず、エリザベスの手中に転がり込んできたのです。

ご存知の通り、エリザベス1世は、「イギリスという国と結婚した」という言葉を残し、誰とも結婚しませんでした。 彼女の肖像画をご覧になったことはありますか?
25歳の戴冠式の時も、50歳を過ぎたエリザベスも、同じ顔。 シワ1本、描かせません。 エリザベスにとっては、彼女自身が、イギリスという国そのもの。 決して衰えることは許されず、その肖像画は、国のアイコンという意味合いを持っていたのです。

彼女のとった宗教的スタンスは、中道路線。 プロテスタントでありながら、カトリックを過度に弾圧することはせず、国からは争いごとが減って安定していきました。

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対外的にもスペイン無敵艦隊を打ち破り、国力ランキングは急激にアップ。とにかく、彼女は、資金的な面も含め、あらゆる意味で国を豊かにすることに専念したようです。 それは、彼女が世継ぎを生まなかったことにも表れています。 どんな素質を持っているかわからない自分の子供に国を委ねることはギャンブル。。と考えたエリザベス。 世襲の危うさを悟っていたのです。 この時代に、本当に先進的な考え方を持っていたのですね!

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エリザベス1世により、世継ぎとして指名され、次のイギリス王となったのは、たった一人のイギリス王位継承権保持者、ヘンリ−8世の姉マーガレットの曾孫であるスコットランド王 ジェームズ6世。 エリザベス自身は、子供を産まなくても、チューダー朝の血筋はちゃんと受け継がれています。

1603年、エリザベス1世の死により、スコットランド スチュアート王家のジェームズ6世は、スコットランド王でありながら、同時にイギリス王 ジェームズ1世となり、国を治めます。

長きにわたり、幾度となく戦いを繰り返してきたスコットランドとイギリスは、この時、1滴の血も流さず、一人の王の支配下となるのです。

英国国教会が始まる原因となったアン・ブーリンを母に持ち、思いがけず、転がってきた王位には、ヴァージンクィーンとして富国を目指した美しい女王エリザベス1世。 彼女自身が幸せであったかどうかはわかりませんが、イギリスという国を強くしたのは間違いないのではないかと思います。

華麗なチューダー朝は彼女の死により終焉を迎え、スチュアート王朝が始まります。

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井上麻佐子のプロフィール

井上麻佐子井上 麻佐子 (いのうえ まさこ)
株式会社ザ・ブーケ 代表取締役

慶應義塾大学 経済学部 卒業後
モルガン銀行 リーマンブラザーズ証券会社 勤務
イギリス在住を経て、
株式会社ザ・ブーケ代表取締役に就任。現在に至る。

外資系金融業界を経て、イギリスにて、花装飾と生活芸術の世界と出会い、
1988年より、ヨーロッパ上流社会の生活の中での芸術、文化、習慣を学ぶ。
帰国後、花装飾の仕事とともに、2009年より、The Art of Living(生活芸術)の講座、
講演、および、執筆活動を行い、ヨーロッパの行事、習慣などを、様々な角度から、そのストーリーととも伝える活動に従事。
旅行に行ったり、映画を見たり、絵画を鑑賞したりする、現在に生きる私たちの楽しみが、より深くなる、楽しいヨーロッパの歴史、習慣をわかりやすく紹介。
美術館鑑賞 他、多数のイベントを企画。
2013年〜2015年 NHKラジオ第1 「ごごまり〜」レギュラー出演
〜暮らしに華を〜担当:毎回、ヨーロッパの伝統文化、習慣などを生放送で解説
2014年、2015年と、講座受講者とともに行く、「イングランド、スコットランドのツアー」を開催している。

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